みらい 第2話

僕は、キーボードを叩く手を止めた。
窓のブラインドの隙間から、太陽の暖かい日差しが入って来る。
あこが起き出し、くしゃみをした。
「何か食べる?」
「うん、もらおうかな。ごめんね、いつも」
僕は、机から離れ、キッチンに立った。
「いつものやつでいい? コーヒーはインスタントしかないよ」
「いいよ、何でも」
僕は、布団にくるまったままの彼女に、マグカップを渡した。
ミンが起き上がり、ベッドから降りた。
それに目をやりながら、あこはコーヒーをすすった。
「由宇って、彼女とか作らないの? 何であたしと寝ないの?」
僕は、多少辟易しながら、
「きみに魅力は感じるよ。ただそんな気がしないだけ」
「……ふーん」
それだけ言うと、僕たちは黙ってしまった。
あこは、長い髪をピンでまとめあげた。
「シャワー浴びるわ。お風呂借りるね」
「どうぞ」
僕は、ハムサンドを作りはじめた。
あこが、シャワーを浴びながら、鼻歌を歌っている。
僕もそれに合わせて、鼻歌を歌ってみた。
そしてナイフでトマトを切った。

浴室から出て来たあこは、濡れた髪をタオルで拭きながら、
勝手に人のうちの冷蔵庫を開ける。
「由宇のおうちっていろいろあるのね。いつも感心するわ」
そう言うと、缶ビールを取り出し、プルトップを開けた。
僕がハムサンドを差し出すと、彼女は大口を開けてほお張った。
「うん、おいしい……。由宇のお嫁さんになる人は幸せね」
「それ、皮肉?」
僕が苦笑いすると、彼女はにっこり笑う。
そしてビールを飲み干した。


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