みらい 第1話

冬の街並みがこのアパートの2階からは見える。
机には、今日までに終えなければならない仕事がある。
それにうんざりしながら、ようやく片付け終わると、
ほっと一息、飲みかけのコーヒーを飲み干した。
遠く私鉄の走る音がする。
飼い猫の「ミン」がベッドから顔を出した。

マグカップ片手に、夜景を見ていると心が和んだ。
ファンヒーターの灯油が切れる音がしたので、灯油を入れる事にした。

うちのファンヒーターは古いのでなかなか点火しない。
足でスイッチを押した。

ファンヒーターがようやく点火した頃、チャイムが鳴った。

「由宇、いるの? 開けて〜」
ドアを開けると、土橋あこがいきなり抱きついて来た。
あこの髪は、タバコの臭いがした。
「……また飲んでたのか。水持って来るよ」
「優しいのね。そんなあなたが好きよ。なか入れて?」
僕は、あこの靴を脱がせ、肩を貸してやり、彼女をベッド脇に座らせた。
水の入ったコップを手渡すと、あこは一気に飲み干した。
「ごめん、少し寝かせて。もうダメ」
「飲み過ぎだろ……」
あこは、服もはだけたまま、横になってしまった。
ミンが嫌そうにベッドから降りていった。
「コートくらい脱いで寝てくれよ」
僕は、文句を言いながら彼女のコートを脱がせ、布団を被せると、また椅子に腰かけた。

最終であろう私鉄が走る音がする。
ミンが、膝にのぼって来たので、丸い頭をなでてやった


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