朝の朝食


壮麗な屋敷に住むじぃさんは、

ヒゲの凍りそうな寒い朝でもテラスでモーニングを食べる。

アパート暮らしの若い女の子は、シャワーを浴びた後、

永谷園のお茶漬けで朝食を摂る。

僕は、駅のホームの売店で買った焼そばパンを食べる。

冬の移ろいゆく寒い季節には、朝食食って、

深く息をすいこんで、ミトコンドリアに酸素を送り込み、

身体中の生体エネルギーを満たすのだ。




鼻の穴をほじる女


鼻をほじる女は愛きょうがある。

ガンダムのサントラをヘッドホンで聴きながらそう思った。

戦闘シーンの音楽と、鼻の穴のそうじをする女。

ああ〜、この世はわりと平和なり。



ワキガ


あなたはワキガを臭いと思うだろうか?

私はそうは思わない。

だって自分の脇の臭いは香ばしい。

そうは思わないか?

いつからひとはワキガになるのだろう?

生まれながらのワキガなんてあるのだろうか?

それは宇宙育成の秘密より難しい。

ワキガをまといし人たるもの、

ワキガによりて、ワキガたらしめん。




春の嵐


豪雨の夜に、NHKラジオを聴いていると、

風のつよいやみの中、ヒカルのは、ジャッカルの目。

100_の雨は、暴風雨となって、僕のこころをかき乱す。

恐怖の鉤爪が、僕の身体を捕えた時、

からまった脆弱な部分は吹き飛び、

揺れる春の花弁は突風に踊り咲く。

あなたが咥えたタバコが水たまりに落ちると、

そいつの上には、激しく雨が叩きつける。




眠りネコ


色とりどりの星たちの下で眠るネコの上に、

夜中まで干されていた女物のパンツが、

ひらひら風に舞って落ちて来た。

アパートに女の子が仕事から帰って来ると、

ネコがやってきて、

「おじょうさん、パンツを落とされましたよ」

とパンツを口に咥えて女の子に差し出す。

「ありがとうございます」

そう笑顔で女の子は言うと、

お礼に、バンゴハンの刺身をネコに渡した。

その時、流れ星がひとつ流れた。



クラシック


にぎりめしを食べながら田園の道をあるく。

クラシックのような旋律を奏でるそよ風は、

ヒカリに照り映える水草や苗たちを涼やかに撫でる。

穏やかなる湯に浸かるお嬢さんは、

水が流れる音にそっと頬を染めた。

お嬢さんは、水中用ステレオヘッドホンで、

クラシックに聴き惚れる。




モダンな怪物


冬の道路を横断するきみの黒髪は繊細そうで、

可愛らしい薄紅色の唇には、僕はいまは触れることはできない。

(……どうしたの?)きみは問う。

風に舞うように走る僕をきみはおいかける。

髪を振り乱し、呼吸を荒くして、僕らは走った。

薄暗い小部屋で、卑猥ならくがきをながめながら、

腸のかたちによじれたモダンな怪物を出すと、

爽快な笑顔で、きみとモーニングコーヒーを

優雅に楽しむのさ。






暖簾をくぐり、緑の世界へ抜けよう。

そこには緑成す大地があり、

美しい山や川があり、

高原まで歩くと、まるいテーブルと椅子が置いてあり、

そこへ腰かけると、

テーブルの上のカフェをいただく。

足を組んで、背伸びをしたなら、

思い切りみどりの空気を肺に取り込むのだ。




おいしいお茶


姿勢を正して茶を口に含む。

庭の池の鯉がぱしゃりと音を立てる。

やがて空は雨になり、

池のうえに、パタパタ、パタパタと雨粒が落ちる。

松の木が池に映って、苔むす岩には、

雨粒で濡れ行く午後のお茶。

足がしびれて、イテテテと悲鳴をあげる。



突風


朝のにおいに包まれた

ココロにうつる水かがみ。

小鳥のなく青空に、

薄化粧した耳の生えたネコの雲。

突風が吹いたら、

そいつはぴゅーって消えちゃった。

ああ、初夏の朝の物思い。




夏の雪


この時をくぐり抜けて行くと、

広がるは、震える雪原。

踏みしめた雪は、夏の花火の様にパッと散る。

消えうる思いと、寄せる波のむこうに、

棄ててしまった夏の雪は、

いまも胸の中におどる。



台風クラブ


あの人は台風と暮らしている。

あの人のあたまをなでる台風は、

風をおこすと、雲のわたあめをあの人にあげる。

ああ〜、空には夏が終わる奇跡の交換。

ああ〜、感じるよ。秋の呼吸を。


秋は台風を呼び、

台風のなかで裸足で感じあえる。




枯れた花


ちり紙に少しだけ付いた鼻血に、

みかんの皮をむいた時の、

青く煙るすっぱい味わいを思い起こす。

枯れた花を摘んで、あの人に見せてあげたら、

その花は、土の上にに落ちて、青い果実を

実らせるのです。



遠い草道


はるかな草道を歩く少年は、

雲の切れ間に見える太陽を

まぶしそうに手をかざし、

少女の影をふまないように歩く。

マフラーの結び目は、

処女のココロにはやんわりで、

やさしさとは裏腹な性への助長に、

少年は、ただ遠い草道を歩いて行くのです。



みかんの誘惑


みかんの皮をむいて、

あ〜んと、みかんの房を食べると、

身体にビタミンがめぐる。

みかんを食べて、みかんをイメージすると、

みかんの木に白い花が咲く。

甘いみかんを舌の上で転がす。

みかんはやさしく味になる。

甘くやさしい味になる。



おちる葉


タツナミ草の葉がおちた。

夜が明けきらない瞬間、はらりとおちた。

花のしおれた部分も散り、

机の上に紫色の花を散りばめる。

朝が来て、夜が明け、

朝陽がのぼると、

冬の気温で外気は満たされる。



眠いの森


眠い眠い眠いの森の

明けの空に三日月ひとつ。

あくびと涙が出たなら、

ラジオ体操でもしましょうか。

それとも2度寝をしましょうか。

太陽がのぼり始めた頃、

人は目覚めるだよ。



ピーナッツの深呼吸


鼻の穴にピーナッツはめてみた。

黒いヘッドホンを噛んで眠るキミの唇に、

そっと紅いアメを口移しすると、

彼女は深く息を吹き返す。

僕が鼻の穴のピーナッツをフン!と飛ばすと、

キミは、クスクス笑って頬を染める。




腹時計


ぼーん、ぼーんと腹時計が鳴る。

クラシックを聴いてごまかそうとしても、

正確な腹時計は、ちくたくちくたくと時を刻む。

あああ〜ああ、

腹が減った。




銀河鉄道


真夜中の銀河鉄道に乗って、

火星を旅しよう。

銀河鉄道の食堂でひとりゴハンを食べていると、

アルデバラン行きの列車とすれ違う。

銀河鉄道に乗って旅をしよう。

いまの僕にはそれしかできないのだから。



デンプン


食べきれない食パンを

きみが代わりにかじる。

真昼の宴をもよおす塩を吹くクジラが、

虹の川を渡るのを目撃する。

歯ブラシで、歯に付着したデンプンをこすると、

身体のエンジンを切って、

脳みそをリサイクルに出すのだ。




クスリのテーマ


緑の山河にのぼり、

緑の空気を肺に取り込み、

清いわき水を飲もう。

向かいの谷には、かすみかかる雲海が広がり、

木の梢からは鳥たちの鳴き声。

汗は身体の老廃物を流し、

明日への希望はここより生まれいずる。



ブルーコスモス


アンタレスの夜気に触れたら、

ブルーコスモス一輪咲く。

星辰の花畑の丘で、

青くて透明な燐光を浴びて、

ブルーコスモスは揺れている。


摘み取ったら、禁断の花は、

星のかけらになって、夜空をかける。



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